2009年、今後のF1 [FORMULA 1]
FIA FORMULA ONE WORLD CHAMPIONSHIP 2009開幕まで、もう2ヶ月とちょっと。昨年はSUPER AGURI F1 TEAMのシーズン途中撤退があり、シーズン終了後には記憶に新しいHONDA RACING F1 TEAMの撤退もありました。
どちらも大きく括れば資金不足による撤退であり、これによって今後数年でF1は大きく変わろうとしています。
昨年末、F1のコスト削減に向けて、世界モータースポーツ評議会にて以下の内容が同意されました。
まず2009年シーズンのレギュレーション変更ですが、
- 1シーズンで1人のドライバーあたり最高8基、テストに4基、合計20基のエンジン使用を上限とする
- エンジン回転数は最大18,000rpmに制限する
- 内部の再チューニング禁止。トランペットおよびインジェクターの調整のみは認められる
- 3レース1エンジンを使用する
- 独立系チームに対するエンジンコストは2008年価格の50%を上限とする
- ルノーエンジンのみ他メーカーエンジンと同等性能とする変更を可能とする
- フリー走行以外でのシーズン中テストの全面禁止
- 60%スケールおよび毎秒50m以上の風洞の使用禁止
- 風洞をベースとした研究およびCFDリサーチの比率がチーム間で合意に達すれば、FIAに提案される
- 地元の法律にのっとり、ファクトリーは年間6週間閉鎖する
- スポッターの必要性を排除するため、タイヤや燃料の情報の共有をはじめ、多数の方法によりマンパワーを削減する
続いて2010年のレギュレーション変更ですが、
- 独立系の1チームに対して1シーズンあたり500万ユーロ未満でエンジンが供給されるものとする。エンジンは独立サプライヤーあるいは自動車メーカー系のチームが供給の継続を保証した上で供給する。独立サプライヤーのエンジンを使用する場合は2008年12月20日までに契約を締結させること。
- この同一のエンジンは2011年および2012年も継続して使用する(つまり2011年仕様のニューエンジンはない)。
- 実行可能性が確認された後、全チームが同一のトランスミッションを使用することになる。
- シャシーの全部品のリストを用意した上で、各部品についてパフォーマンスを差別化する要因(競争力の要素)を継続させるかどうかの決断が下される。
- パフォーマンスの差別化要因を継続する部品に関してはシーズンに先だって承認を受ける。
- 一部の部品はパフォーマンスの差別化要因を継続するが、安価な材料を使用すること。
- パフォーマンスの差別化要因でない部品は規定が設けられ、最も経済的に購入、あるいは製造する。
- 無線およびテレメトリーシステムの標準化。
- タイヤウオーマーの禁止。
- タイヤのメカニカルな空気抜きの禁止。
- レース中の給油禁止。
- 空力研究のさらなる制限。
- タイヤフォースリグ(バーティカルフォースリグ以外)の禁止。
- さらなる設備の削減を目指し、ファクトリー設備を徹底して分析する。
2008~2010年まで、エンジン開発は凍結されていますが(つまり2010年シーズンまでは2007年仕様のエンジンを使用する)、2008年シーズンはレギュレーションのグレーゾーンを突いて一部の開発がされてしまいました。しかし2009年からは先にも書いたように完全に明確に凍結されることとなったのですが、今回のレギュレーション変更によって、2010年エンジンを2012年まで使用することが決まったので、実質的に言うと2009年から2012年までエンジン開発が凍結となりました。また2009年はエンジン価格は2008年の半額と決められていますが、2010年以降はさらに500万ユーロ未満と具体的な価格上限が設定され、さらにコストが削減されることになります(これは500万ユーロ未満の価格でエンジンを作るという意味ではなく、1000万ユーロのエンジンであっても独立系チームには500万ユーロ未満で販売をしなければならないというルール)。
またここで「独立サプライヤーのエンジン」というものが新たに登場することになりました。これはコスワース社がF1の標準エンジンを作成するというもので(エンジンブランドは無名となります。コスワースエンジンとはならない。)、全てのチームはこれと同等のエンジンを使用しなくてはなりません。つまりワークスであっても自社開発エンジンは使用できず、コスワースが開発したエンジンを自社で製造する形となります(この場合、エンジンブランドは各メーカー名となります)。製造コストの面から見て、コスワースは複数チームのサプライヤーとなることが予想されるので、500万ユーロ未満という低コストを実現可能ではありますが、ワークスは自社エンジン分のみの作成となるのでコストは見合わないと思われますが、エンジンブランドに自社名を表示させることができるので、F1マニア以外には自社エンジンとしての宣伝効果はあり。
また標準エンジンの導入に伴って、トランスミッションも標準化されることが決まっています。F1においてトランスミッションはエンジンと蜜月関係にあり、どちらもが最良のパフォーマンスが出るように製作されるものであるため、エンジンが標準化される以上、そのエンジンと並行開発される専用のトランスミッションが最大のパフォーマンスを引き出せるという意味で、標準化は当然の流れかと思われます。
その他にも様々なシステムが標準化され、製造コストの削減が行われます。これによって新世代F1はワークスチームの意地の張り合いから、パッケージ化されたF1を如何にマネジメントするかという、チームスポーツへと変貌することでしょう。まだまだ目の離せない新世代F1。これ以上、サーキットが減らないことを祈りつつ、楽しみにしていきたいと思います。
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